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2015年12月29日

Kindle版 偽宦官になって紫禁城でハーレム生活




偽宦官になって紫禁城でハーレム生活

 皇帝からの詔勅を得た泰山派の少年道士が偽宦官となって紫禁城に潜入する。美少女女官に囲まれてハーレム生活と思いきや、宮中は、悪宦官が権力を握り、妖魔が蔓延り、陰謀が巡らされる伏魔殿だった。果たして皇帝を救出できるのか?中華ファンタジー小説。

 妖魔との戦いは俺の専門分野と豪語する泰山派九番弟子の荘鐘馗はチビで女の子に間違われる容貌。武芸の腕は半端だが、肉眼で妖魔を見ることができる特殊能力を有する。
 宮中に妖魔が蔓延っているので救ってほしいとの皇帝からの詔勅を受け取った鐘馗は、紫禁城に乗り込もうとする。しかし、紫禁城は国中から選りすぐった美少女女官たちが集まる場所。男は全員、自宮し宦官にならなければならないという規則。鐘馗は女の子っぽい容姿が幸いし、自宮を免れ、偽宦官として潜り込むことに成功する。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
大滝 七夕
法学部在学中に行政書士、宅建等の資格を取得し、卒業後は、行政書士事務所、法律事務所等に勤務する傍ら、法律雑誌の記事や小説を執筆し、作家デビュー。法律知識と実務経験をもとにしたリーガルサスペンスを中心に、ファンタジーや武侠小説などを執筆している。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

冒頭部抜粋

 偽宦官になって紫禁城でハーレム生活
                  大滝七夕

 1、皇帝の密勅

「本日、天気晴朗なれどもゴミ多しだな……」
 泰山の中腹にある封禅壇に積もった埃を箒で掃きながら小柄な少年が呟いた。腰に全長二尺三寸(約七〇センチ)ほどの剣を下げ、青い道袍をまとっていることからして、泰山にある道観の少年道士であろう。やせっばちで背丈は低く五尺(約一五〇センチ)に届かない。髪は頭の天辺にお団子を作り青い頭巾で覆っている。日焼けしたためか色黒ながら、丸みを帯びた童顔にやや釣り上がりながらもつぶらな子猫のような瞳をしており、一見すると女の子のようにも見える。
 少年は暑い暑いとこぼしながらもせっせと箒を動かした。炎天下の下、日陰のない封禅壇に立っているのは武功を磨いた者でも堪える。だから、さっさと掃除を終わらせようと思っているのだ。
 と、天から妙な固形物が降ってきた。もちろん、雨でも雪でもない。少年が、「はあっ?」と信じられないとばかりにあんぐりと口を開けて、箒を止めた。足元に鼠の死骸の欠片がいくつも転がっている。封禅壇の天辺でガアガアとけたたましい騒音が沸き起こった。無数のカラスが、羽をばたつかせながら下りてきたところだった。
「カラスの馬鹿野郎!俺の仕事を増やすな!」
 少年は憤怒の色を浮かべると封禅壇の天辺に向かって駆けた。
 封禅壇は、ビラミット状に土を盛り、石を積み重ねた巨大な建造物である。封禅――すなわち、皇帝が天と地に自らの即位を知らせ、天下が太平であることを天と地に感謝する儀式を行うためのものだ。
 即位した皇帝が封禅の儀式を行うのは、一度だけ。普段は全く利用されていない無駄な施設であるが、だからと言って、放置するわけにはいかない。朝廷が封禅壇を管理する役人を派遣するのが習わしであったが、今の皇帝は、封禅壇のことなど、とんと気に留めていないのか、一人の役人も派遣してこない。そのため、泰山に道観を構える泰山派の道士が代わって管理していた。箒で埃をはいて、ごみを拾うだけの単純な仕事であるが、何しろ、封禅壇はでかい。それに、時折、カラスが不潔な落し物をしていくので、誰もやりたがらないのだ。それ故、泰山派の弟子の中でも下っ端の者の役目となっていた。
 少年は獲物を追う虎のように目を怒らせながら、箒を振り回した。と、カラスどもは、抗議するようにガアガアと喚き、羽をばたつかせながら、飛び立って行った。後に残ったのは、食い散らかした鼠の欠片。
「畜生!また、最初からやり直しじゃないか!この馬鹿ガラスどもが!」
 抗議したいのはこっちだとばかりにひとしきり罵ったが、もちろん、カラスに言葉が通じようはずがない。カラスどもはしばらく封禅壇の上空を漂った後、遠くへ飛び去った。
「はあ……どうすんだよ……このゴミ」
 封禅壇がカラスの止まり所になっているとは、国や皇位の暗澹たる行く末を暗示しているようで、何とも不吉であるが、少年はそんなことは思いもせず、鼻をつまみながら、箒で掃こうか、くずかごを持ってきて一つ一つ拾おうかと逡巡するばかり。すると、
「そこのヨウジョ――!」
 救いを求めるような悲鳴が封禅壇の下から聞こえてきた。ちょっとした小高い山ほどもある封禅壇の麓から発したのだから、相当のでかい声である。
 ヨウジョ?養女?妖女?そんなわけないし……もしかして、幼女……!
 暫し、首を傾げた少年は、頬を真っ赤に膨らませると、
「俺は幼女じゃねえぇぇぇ!十七歳のレキッとした、おとこ!男だぁぁぁ!」
 と、叫びながら振り返った。
 封禅壇の麓――文武百官が整列できる広大な広場の隅に襤褸切れをまとった中年の乞食が仰向けに倒れて、自分のことを見上げていることに気が付いた。右腕を震わせながら手招きしている。
「そうだ……!そこの娘!お前だ」
「だ・か・ら!俺は男だ!」
「男でも女でもいい!そこの童子!下りてこい!」
「俺は童子と言われる年じゃねえぇぇぇ!十七歳の男!それに俺のことを気安く呼びつけるな!泰山派の九番弟子――荘鐘馗とは俺のことだ!」
「何番目の弟子でもいい!そこの新人!さっさと降りてこい!俺は皇帝の密使だぞ!」
「だ・か・ら!新人じゃねえぇぇぇ!十年前に弟子入りして、九番目に拝師を受けた……えっ?皇帝の密使?」
 少年――荘鐘馗が、唖然として、乞食を見下ろした。ほぼ放置状態だった泰山に突然、皇帝が密使を送ってくるとは一体何事か。
「ええい!俺は掃除の途中で忙しいんだよ!師父がいる玉皇宮へ行けよ!」
「俺は瀕死の重傷を負って、これ以上動けねえんだ!見ればわかるだろう!この小僧!」
 瀕死の重傷という割には、やたらとでかい声を張り上げる乞食だ。
「遠すぎて怪我しているかどうかなんて見えるわけないだろ!くそ乞食!」
 鐘馗は、ぶつぶつ言いながらも、ゆっくりと石段を下り始めた。
「早く降りてこい!俺は妖魔に追われているんだ!もうすぐ追いつくぞ!」
「はあ?妖魔?」
 鐘馗は、広場の先、下り坂となっている崖の方に目を向けた。泰山は最高峰の玉皇頂を中心に険しい山々が連なる霊山である。封禅壇のあるこの丘は、泰山の中腹。四方が開けており、見渡せば、泰山派の道観「玉皇宮」がある玉皇頂の他、数々の名山を一望することができる。妖魔の潜める場所はない。
 鐘馗が、辺りをきょろきょろと見渡しながら下りていると、そうと気付いたらしく、乞食がまた叫んだ。
「俺は、紫禁城からここに来るまでずっと妖魔に追いかけられていたんだ!」
「妖魔が紫禁城から?」
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