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2016年01月11日

Kindle版 僕はさすらいの十手持ち




僕はさすらいの十手持ち

 冴えない男子高校生が幼馴染の女子高生と駅前商店街にあるお化け屋敷に入ると、江戸時代にタイムスリップしたかのような異世界が広がっていた。早速、十手持ちとなって事件解決のために奔走するが……。

 公立華宮高校に通う伊達友平は冴えない男子である。夏の放課後、アーチェリー部に所属し、学校でも評判の美少女、前部琴美に誘われて、華宮駅前商店街近くにある知る人ぞ知るお化け屋敷「異世界 露草の国」に入る。
 しかし、そこはお化け屋敷などではなく、江戸時代にタイムスリップしたかのような「異世界 露草の国」が広がっていた。
 友平は、武器屋から羅刹の長十手を手渡され、三日月の弓を手にした琴美と共に、異世界 露草の国に踏み出す。
 泊まっていた宿で偶然に盗賊団「鬼火」の一味を捕まえたことで、友平は、火付盗賊改方の与力や同心の下で働く「さすらいの十手持ち」として登録される。
 一方で、友平と琴美は、現実の世界と露草の国を行き来するための道具「露草の滴」を盗賊団「鬼火」に奪われてしまう。
 盗賊団「鬼火」を追いかけて、旅に出た友平と琴美は、その途中、盗賊団「鬼火」に父親を殺された挙句、兄も行方不明になってしまったという女剣士の藍花と出会い、行動を共にする。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
大滝 七夕
法学部在学中に行政書士、宅建等の資格を取得し、卒業後は、行政書士事務所、法律事務所等に勤務する傍ら、法律雑誌の記事や小説を執筆し、作家デビュー。法律知識と実務経験をもとにしたリーガルサスペンスを中心に、ファンタジーや武侠小説などを執筆している。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

冒頭部抜粋

僕はさすらいの十手持ち
                      大滝七夕

 第一章 露草の滴

 狸寝入りしているのかと思ったら、本当に寝てしまったようだ。
 ここは宿屋『陽炎』にある八畳一間の小さな和室。左右は塗り壁に囲まれ、部屋の出入り口はふすま一枚で、庭に面した吐き出し窓にはガラス戸などはなく、障子戸が一枚あるだけだ。
 いまどき珍しい、本格的な和室である。
 障子戸の向こうはすでに薄暗くなり、和紙にほのかな月明かりが照らし出されているのが分かる。
 天井を見上げると、シーリングライトなどはなく、常夜灯も点っていない。
 二枚並べた敷布団の頭の方に、四角い和紙で覆われた灯篭がある。先ほどまで火を灯していたけど、今は消されているので、部屋の中は、暗い。
 それでも、障子戸に月明かりが差し込むおかげで、隣の布団に横たわる前部琴美の顔ははっきりと識別できた。
 薄暗い中でも、白く艶々とし完璧な卵形をした輪郭がはっきりと分かる。肩までかかる長い黒髪を頭の天辺で巻き上げて、うなじを見せている様は艶かしい。
 きりっとした天然の薄眉に切れ長の瞳には睫がたっぷりと宿り、鼻筋の通った形のよいガラス細工のような鼻、それにぷっくりとしたゼリーのような唇。
 ピンクの浴衣を乱れなく着こなしているが、程よく膨らんだ胸元、くびれがあり、これまた程よく盛り上がったお尻は、隠しようがない。
 琴美は、僕こと、伊達友平と同じ公立華宮高校に通う二年生の幼馴染だ。小学校の時からずっと同じ学校だったのでよっぽど、縁があるのだろう。
 身長はかなり低く百五十くらいしかなく、琴美自身もコンプレックスだと言っていたけど、男子の間では、大変人気のある女子生徒で、この前の文化祭の時に、華宮高校美少女コンテストをやった際に、見事にグランプリに輝いた。
 そんな琴美だから、とっくに彼氏などもいてもおかしくない。
 事実、琴美に言い寄る男子はたくさんいるから、黙っていても、彼氏ができそうなものだ。
 なのに、
「私には彼氏はいないの」
 だから、今日は一緒に下校しようと、琴美が友平を引っ張ってきた時、友平は、びっくりしてしまった。
 友平が、下駄箱に上履きをしまう手を止めて、きょとんとしていると、
 長い黒髪を頭の後ろで束ねたポニーテールの髪型に、夏服の丸襟の白ブラウスにえんじ色のリボンをきちんと首に締めた紺色のミニスカート姿の琴美が、
「友平は彼女とかいないんでしょ?」
「えっ……まあ、いないよ……」
「だから、今日は付き合ってやるって言っているのよ」
「付き合ってやるって……」
「私ほどの美少女が、友平みたいな冴えない男子と一緒に下校するなんて、前代未聞のことなのよ」
「何言っているの……?」
 琴美の言うとおり、友平は冴えない男子である。身長は百六十しかなく男子としては低いし、おまけにヒョロヒョロとしていて、顔立ちも細面で如何にも頼りない。ショートヘアの髪は寝癖が立っていても気にしていない。
 唯一の取り柄といえば、目が少しばかり大きいことだろうか。
 一度だけ、琴美が、
「友平は優しい目つきをしているね」
 と褒めてくれたことがあった。中学のころのことだ。今でも、そう思ってくれているのだろうか?
 華宮高校に入ってからは、友平は、琴美と同じクラスになったことはないし、帰宅部の友平とアーチェリー部に属している琴美とでは接点はほとんどない。
 なのに、今日の放課後になって、いきなり、今日は付き合ってやるなどと引っ張られたのだ……
 一体どういうつもりだったのだろう……
posted by ノベル時代社 at 23:32| Kindle版 僕はさすらいの十手持ち
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