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2016年02月26日

Kindle版 エンジェルハート法律事務所

Kindle版 エンジェルハート法律事務所



エンジェルハート法律事務所(リーガルファンタジーシリーズ)

「全財産を投じて手に入れた最強の武器が欠陥商品だった。契約解除して金を取り戻したい!」
 山賊狩りを生業とする青年が法律事務所を訪れると、所長以下全員が美少女というハーレム事務所。事件はあっさり解決するものの報酬が払えないため、補助職員として奴隷同然に働かされることになるが……。


 裁判所の判決によらず、法律事務所が武装して自力救済することができる世界の話。
 軍隊は弱いが平和なダーバオ共和国に暮らす新渡戸竜兵は、気功剣と気功盾によってアンブー山脈に跋扈する山賊を狩ることを職とする青年。悪徳武器屋に粗悪な気功剣を掴まされて全財産を失った竜兵は、途方に暮れていたところ、エンジェルハート法律事務所の十八才の法律家和泉遥に救われる。悪徳武器屋に内容証明を送りつけて、全財産を取り戻した竜兵は、お礼に事務所を訪れると、取り戻した財産の十倍の報酬を支払うために、執行部部員として無理やり働かされることになる。
 エンジェルハート法律事務所の面々は美少女ぞろい。所長は、十九才の相馬司彩。法律家であると同時に売れっ子アイドルでもある。また、竜兵の直属の上司である執行部部長大貫早矢香は、普段はオドオドしているが、飛空戦艦に乗り込むと性格が荒々しく豹変する十七才の女の子だ。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
大滝 七夕
法学部在学中に行政書士、宅建等の資格を取得し、卒業後は、行政書士事務所、法律事務所等に勤務する傍ら、法律雑誌の記事や小説を執筆し、作家デビュー。法律知識と実務経験をもとにしたリーガルサスペンスを中心に、ファンタジーや武侠小説などを執筆している。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

冒頭部抜粋

 エンジェルハート法律事務所は自力救済が認められているんです!
                                 大滝七夕

 1、エンジェルハート法律事務所

 陰気でうさん臭い通りだった。ようやく馬車が一台通れるほどの狭い道でありながら、石畳が整然と敷かれている。但し、あちこちにゴミが散乱し、野良犬の糞やしょんべんの跡が残っていた。二十メートルはあろうかという得体の知れない木々や雑草が伸び放題のまま放置された森が南側から迫っているため、終日日差しが遮られ、真夏の昼間だというのに夕暮れの後のように薄暗い。時折、森からカラスの陰気な鳴き声が響いてくる。
 左右に立ち並ぶ石造りの建物の外壁もくすんだ色合いを為しており、扉や窓枠は塗装がはがれるままに放置されているものが多い。
 他所から来た観光客ならば、世界で最も治安がよく美しい都市と言われているダーバオ共和国の首都ジンドウに、このような場所がある、ということに、愕然とするであろう。
 クラヤミ横丁と呼ばれるこの通りには、まともな人間ならば近づかない。看板が出ている店もあるが、いずれも怪しい薬、まがい物、違法な物を売る店だったり、違法営業をする店だったりする。この通りに足を踏み入れる連中も真夏だというのに、黒いマントで身を包んだり、フードで素顔を隠している得体の知れない怪しげな奴らばかりである。
 一人の男が歩いていた。
 そいつは、顔を隠してはいなかった。所々に寝癖のようなくせ毛のあるショートカットの黒髪。それなりに整った細面の顔立ちをしているが、肌は浅黒く焼けている事からアウトドア派の人間だと分かる。だが艶のある肌で髭は一つもなく無骨な感じはしない。切れ長の涼しげな瞳は柔和ささえ漂う。カフェで、マスターでもやっていそうな好青年である。
 男は、どうやら、怒っているらしく、眉を吊り上げて、ズカズカと足を踏み鳴らしながら歩いていた。右手には、手の平にちょうどよく収まる長さ二十センチほどの懐中電灯のような物を握りしめている。縦に深いひびが入っているところを見ると壊れているのだろう。
 詳しい者が見れば、その懐中電灯のような物が、気功剣(オーラソード)と呼ばれるタイプの武器だと分かるだろう。親指の辺りにあるスイッチを入れると先端の水晶から光刃が出るのである。光刃の長さや幅、色は遣い手によって異なる。遣い手の気功(オーラ)の強弱に左右されるからだ。
 男の背丈は百七十センチほど。それなりに引き締まった二の腕を完全に露わにしたダークグリーン色のタンクトップに長ズボン。その上に防気チョッキと呼ばれる簡素な防具を身に付けている。防気チョッキは、真剣はもちろん気功の刃や弾も貫かない特殊な素材でできている。
 男の防気チョッキは迷彩柄。首都ジンドウの北方に広がる険しい山脈――アンブー山脈に潜む山賊を討伐する所謂「山狩り」を行う狩人がよく愛用している柄である。ということは男もそのような仕事をしているのだろう。
 男の反対側から若い女が歩いてきた。身長は百六十センチほどで華奢な体つきをしている。卵形の整った輪郭に切れ長の瞳を宿した色白の女である。化粧っ気はなく幼さが残る。美少女と言ってもよいだろう。
 美貌の次に、目に付くのは全身が黒ずくめであることだ。頭の天辺近くで結い、先端が首の辺りに垂れるポニテールの黒髪。真夏だというのに、上には黒いスーツを羽織っている。下は黒いミニスカート。腰巻かと思うほど短いひらひらのスカートだ。足を一歩踏み出すだけで、捲れて、パンツが見えそうである。但し、生足だったらの話。女は、黒いタイツを穿いていた。
 高級そうな黒皮のハンドバックを一つ持っているだけだ。事情を知らない者があれば、葬式の帰りだと錯覚するだろう。事実、切れ長の瞳には、憂いの色が浮かんでおり、今にも泣きそうな雰囲気である。
 その若い女と男の右肩同士が正面衝突した。よろけたのは体格で劣る女の方である。ハンドバックが石畳の道に転がった。
 女は、黒いヒールを履いていたが、体勢を大幅に崩すようなことはなく、わずかに前のめりになっただけで、すぐにスクッと身を起こした。途端に、顔に浮かんでいた憂いの色が消え去り、凛とした表情になる。切れ長の瞳の奥から強い光が放たれる。
 女は、振り返ると
「ちょっと!危ないじゃないの!」
 と、眉間に皺を寄せて、男を睨み付けた。
 男は、女とぶつかったことを蚊に刺された程度にしか思っていないのか、女の一喝の後も三歩ほど歩いた。
 それからようやく、後ろに殺気に似た気配が沸き立ったのを感じ取ったのか、じろりと首だけ回して後ろに目を向けた。
「うるせえ!」
「うるさいじゃないわよ!もしも、私が杖を突いた老婆だったら、ひっくり返って、大怪我をしていたところよ!そうなったら、あなたは、私に対して不法行為に基づく損賠賠償責任を負わなければならないのよ!」
「ごちゃごちゃと、訳の分からないことをのたまいやがって!ますますうるせえ女だ!」
 男は、「ふん」と鼻を鳴らすと、女を無視して歩を進めた。
「ちょっと待ちなさいよ!」
 女は、道端に転がったハンドバッグを拾い上げると、中から、拳銃を取り出していた。持ち主の気功を実弾代わりに打ち出す気功拳銃(オーラガン)だ。
 いやはや、可憐な容貌とは裏腹に血の気の多い女である。
 女は、男に気功拳銃を向けようとしようだった。だがそれより先に、男は、右手にあるうさん臭い店の出入り口の扉を足で蹴り飛ばして、ズカズカと中に入っていた。
 女がその店の前まで駆けて、扉の上にかかる金属の看板を見上げた。塗装がはげ落ち、さび付いていたが、『リグモ武器店』と読めた。

 リグモ武器店に入るなり、男は、壊れた気功剣を木製のカウンターに投げつけた。カウンターの小皿に置かれたろうそくの灯りが揺らいだ。この灯りが消えたら、店の中は真っ暗である。表通りに面した側に窓はあったが、日差しは望めない。広さは十畳もないだろう。店を入ってすぐの場所にカウンターが遮り、その奥に棚が縦に五列並んでいる。棚には、様々な種類の武器が並んでいた。
「いらっしゃいませ……。あっ……これは……新渡戸竜兵さん……よ、よくぞ、ご無事で……」

posted by ノベル時代社 at 21:12| Kindle版 エンジェルハート法律事務所
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