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2016年11月05日

女子大生レイプ事件 即独新米弁護士の事件簿4 (弁護士の事件簿ノベルズ(web限定版))






女子大生レイプ事件 即独新米弁護士の事件簿4 (弁護士の事件簿ノベルズ(web限定版))



 金なし、コネなし、実務経験なし。だけど熱意だけは誰にも負けない!中国拳法を得意とする即独新米弁護士三文純一がレイプ被害者と加害者を食い物にする悪徳弁護士、NPO法人と対決!

 三文純一は、学生時代の彼女で行政書士、社会保険労務士として成功している大浪里奈の下で働く新米弁護士である。
 純一の所に、学生時代の同期生でオシドリ夫婦の桜川明夫・千奈美夫妻が離婚の相談を持ち込む。夫妻には、一人娘もおり、結婚生活は順風のように見えたが、明夫が見ず知らずの女に毎月多額の金を支払っているのだ。純一は、明夫に事情を問いただすも、彼は黙したまま、話そうとしない。
 そんな最中、学生時代のレイプ事件に関して被害者の女から慰謝料を求められているという会社員立華良樹が相談を持ち込んでくる。立華は上場企業に勤める真面目なサラリーマン。話を聞くとレイプ事件とは無関係で、名前の似ている別人と間違われている――つまり、冤罪だという。
 純一も、彼らの事件を解決するために動き回る中、痴漢冤罪で警察に逮捕される事態に。
 事件の背後には、レイプ被害者と加害者を食い物にする悪徳NPO法人と悪徳弁護士の陰謀が渦巻いているらしく……。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
大滝 七夕
法学部在学中に行政書士、宅建等の資格を取得し、卒業後は、行政書士事務所、法律事務所等に勤務する傍ら、法律雑誌の記事や小説を執筆し、作家デビュー。法律知識と実務経験をもとにしたリーガルサスペンスを中心に、ファンタジーや武侠小説などを執筆している。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


(冒頭部抜粋)

 女子大生レイプ事件 即独新米弁護士の事件簿4

                  大滝七夕             

 1、オシドリ夫婦の離婚

 あれほど仲の良かったオシドリ夫婦がこんな状態になるとは、誰が予想できただろう。
 三組に一組は離婚すると言われている時代で、離婚は特段珍しくないとはいえ、オシドリ夫婦の離婚となれば話は別だ。
 三文純一は、お互いににらみ合う男女に挟まれて、深い溜息を洩らした。普段は、研ぎ澄まされたナイフを思わせるように鋭い眼差しも、この時ばかりは、眉と共に垂れ下がっていた。
「アキちゃんの不倫が原因で別れるのよ!マンションを出ていくべきなのは、アキちゃんの方でしょ!」
 女にアキちゃんと呼ばれた男は、黙然として腕を組むばかりである。
 輪郭はやや角ばっているが切りそろえた清潔感のあるショートカットの髪型。きちんとした半袖の白ワイシャツに紺のスラックスを着た若い男だ。お堅い仕事をしているという雰囲気を醸し出している。事実、男の仕事は市役所の正規職員、つまり公務員である。
 一方の女の方も、若さからくる華やかさはあるものの派手すぎる格好はしておらず、どちらかと言うと地味な女性である。ショートカットの黒髪に、色白の細面の顔立ち。スリムな体つきで、小奇麗なワンピース姿からして、到底、一児の母親には見えない。
「これから、私は一人で理亜ちゃんのことを育てていかなければならないの!残債を残したまま、新たにマンションを買ったり、借りる余裕なんてあるわけないでしょ!私はただの保育士で、アキちゃんよりもずっと給料が安いの!理亜ちゃんのことだけで精いっぱいなのよ!アキちゃんは、他所の女に毎月十万も支払う余裕があるんだから、マンションのローンを払い続ける余裕だってあるんでしょ!」
 女は一気に言ってのけると頬を膨らませてそっぽを向いてしまった。
 ここは、三文&大浪合同事務所の窓際に面した面談スペース。円テーブルを囲む三人の背後からは、眩しい日差しが注いでおり、円テーブルに置かれた三つの紅茶のカップを照らし出している。カップの中の紅茶が太陽の光を反射してきらめく。三つのカップは満杯で全く減らないままに、既に湯気が立たなくなっていた。
 純一の手元に置いた法律用箋の一番上には、『桜川明夫・千奈美夫妻離婚事件』と刻まれていた。続けて、『マンションをどうするか?』と書かれているだけで、後は、無意味な、『……』がいくつもあるだけだった。
 話し合いは一向に進んでいないのだ。
 三人の間に、重苦しい沈黙が漂った。事務所の中には、無機質なエアコンの音が流れるばかり。他に物音はなく、人の気配もない。
 それもそうで、今日は日曜日。本来ならば、事務所もお休みなのだが、平日は仕事が忙しくて時間が取れないという明夫、千奈美夫妻の相談に乗るために、特別に事務所を開けたのだ。
 純一もスーツではなく、Tシャツにハーフパンツというラフな格好をしている。どう見ても、弁護士には見えないだろう。
 重苦しい空気をギュッと押しのけようとするように、純一は、しどろもどろに身を乗り出した。
「つまり……、その……、千奈美さんの要望としては、明夫が出て行った後で、マンションには、千奈美さんと娘の理亜ちゃんが住み続けるということでいいのかな?」
「そうよ!それしか方法はないでしょ!私は、理亜ちゃんを守り育てていかなければならないの!不倫している暇なんてないのよ!」
 千奈美は、阿修羅のような表情で、純一をじろりと見やる。その眼差しの鋭さに、純一はひるんだ。
 普段はおっとりとしている千奈美がこんな顔をするとは思わなかった。
「ローンは……?」
「私とアキちゃんが半分半分ということになっているの!だから、半分はこれまで通り、払い続けてもらうわ!」
「それじゃあ、俺の住む家が無くなる……」
 不意に、アキちゃんこと明夫が口を開いた。弱弱しいボソッとしたつぶやきだった。
「あの女の家に転がり込めばいいでしょ!」
「そうはいかない……。不倫じゃないんだ……」

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